2008年2月28日木曜日

論説・WiMAX 無線インフラに期待


県が県内ケーブルテレビ局などと取り組む次世代の高速無線通信「WiMAX(ワイマックス)」の実証実験が佐賀市で始まった。九州では初めて。県南部の広大な佐賀平野を面的にカバーできるこのインフラは、県にとってもってこい。結果に期待が高まる。

■世界規模で普及へ

WiMAXは、処理能力は高いが移動体には向かない無線LANと、常時接続や処理速度はいまひとつの携帯電話などモバイル無線と異なり、両方を満足させるのが特長。「次世代無線」と呼ばれるゆえんだ。
その上、光ケーブルなどの有線に比べ低コストに抑えられるメリットがある。ここに目を付けた総務省がブロードバンド(高速大容量)推進への情報インフラ(基盤)の1つとして、全国と地域の両建てでサービスの担い手を公募。全国版は激しい競争の末に昨年暮れ、携帯電話会社のKDDIとウィルコムの2社に決まった。
地域版は自治体やケーブルテレビ局などを対象に3月3日から本申請が始まる。今回の県内の実験は仮免許での取り組みだ。県庁新行政棟屋上(約60メートル)にアンテナを2基設置し、電波の到達距離や速度、受信した映像の画質などを検証している。
県内一周駅伝でも最終日にこの基地局を使って、移動車から映像の受発信を行った。基地局からの映像の送り(下り)は十㌔あたりまで届いたが、移動車から基地局への送り(上り)はせいぜい3―4キロだった。下りに比べ上りが弱いのは有線も同じだが、期待が大きかっただけに、初めての実験は関係者を少しがっかりさせたようだ。
むろん関係者たちはあきらめてはいない。コスト抑制の早道は、何よりWiMAXそのものの普及だ。数年前から繰り返された実験で、インフラとしての能力の高さは世界標準のお墨付きを得ている。今後は世界規模で普及する可能性も高い。さらには一足早くスタートする全国版のKDDIなどが技術・営業両面で低コスト化への道を大急ぎで探っている。県や地元企業は3月末までさまざまなテーマで実験、課題を洗い出して県の新しい情報インフラとしての採用を判断する。

■難しい導入の判断

ただ判断で難しいのは、情報通信技術の進展の速さ。このWiMAXの登場もそうだが有線、無線、衛星などのインフラからメディア(媒体)まで次々に新手が加わり続ける。常により快適で低コストな技術が生まれる情報の分野は何を、いつ導入するかの判断が難しい。総務省の情報化施策がくるくる変わってもあまり批判されないのも、ここにある。
そんな総務省も2011年7月に予定される地上波のアナログからデジタルへの変換という情報化のゴールだけは動かさない。前年の一〇年度には全国の情報環境を百パーセントブロードバンド(高速大容量)化するとして着々と準備を進めている。
古川県政も情報から取り残される地域や世代をゼロにするため、ブロードバンド百パーセントは国より2年前の08年度までに計画するなど積極的だ。先週、神埼市で開かれた「九州地域情報化研究会in佐賀」には民間の技術者に交じり、県の情報化担当者らも泊まり込み、WiMAX本格導入の可能性を探った。
採用の判断は難しいが、漫然と先延ばしにもできない。だからこその熱心な調査、研究なのだろう。厳しい県予算をやりくりしながら県内と県外の民間連携も視野に入れ、インフラとメディアの双方を重層的に準備して方針は揺るがせない。

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