2008年1月31日木曜日

論説・携帯ネット規制 有害サイト削除重視を


携帯電話サイトに絡む事件で未成年者の被害が増え続けていることから、携帯各社が有害サイトなどを削除するフィルタリング規制を強化。警察庁も出会い系サイトの運営業者を届け出制にする法律改正に着手するなど、本格的な対策がそろって動きだした。

■パソコンを逆転

総務省によると、携帯ネット利用者は2005年に6900万人を超え、パソコン利用者を逆転、現在は1億人に迫っている。これを押し上げているのが10代の利用者だ。結果、昨年の警察庁まとめでは、出会い系サイトに絡む事件被害者の85%が十八歳以下の青少年で、この99%は女子ということが明らかになった。
事態を重視した総務省や警察庁はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話各社に強く対策を要請。これを受け、3社は2月1日までに足並みをそろえてフィルタリングサービスを強化することになった。
フィルタリングサービスとは、特定のサイトを利用者側から見えなくする方法。出会い系やアダルト、薬物や自殺誘引、学校裏サイトなど青少年にとって有害なサイトが対象になりそう。三社は未成年者が新規にインターネット接続サービスを契約する際、原則としてこのサービスを申し込ませる。18歳未満の既存契約者についても親が不要と申告しない限り、夏以降順次フィルタリングを設定する計画だ。
一方、警察庁も出会い系サイト規制法を5年ぶりに改正しようと準備を進めている。改正の柱はサイト運営業者の都道府県公安委員会への届け出義務化。5000を超えると推定される同サイトは連絡先の分からない業者がほとんど。サイトをきっかけに起きる児童買春などの捜査に支障をきたしている。警察が業者を把握しておくことで、行政処分など責任追及を徹底する。
また同法では18歳未満の利用を禁じているが、「18歳以上」のボタンさえクリックすれば誰でも利用できてしまう。今回の改正では、年齢確認の方法を強化し18歳未満の書き込みを削除する義務も課す。罰則強化なども検討しており、警察庁は3月をめどに国会に提出する予定だ。

■別の懸念も浮上

この法改正と、フィルタリング強化の両建てで、有害サイトへのアクセスが大幅に減り、子どもの安全が図られることへの期待は大きい。だが、これですべて解決するわけではなく、むしろ別の懸念も浮上する。
ネットの「負」の部分に行政が規制をかけ過ぎることで、せっかく広がりだした新しい情報コミュニケーションそのものにブレーキをかけてしまう問題だ。いつでも、どこでも、誰とでものユビキタス社会の実現や災害、緊急時の双方向連絡などネットのプラス領域が遠のいてしまう。何より、子どもたちが携帯やパソコンに習熟していくことに水をさすことになっては元も子もない。
フィルタリングも、例えば公式サイト以外は削除などと極端に走ると、多くの人気サイトがなくなり、「ケータイ文化」そのものを後退させかねない。携帯各社には今回の措置を緊急避難的にとらえ、有害サイト削除重視の対応を願いたい。
もともと、今回の動きの背景には被害に遭った女子中高生のほとんどが自ら顔の見えない大人を誘っているという現実がある。この問題の解決こそが重要だ。ネットを使う上でのモラル教育はもとより、子どもや若者にとって魅力的で安全なコンテンツづくりなど、大人たちが取り組むべき課題は多い。

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