2009年3月21日土曜日

論説・携帯禁止論議 まずは家庭や学校で


文部科学省が小中学校への携帯電話持ち込みを、原則禁止にするよう都道府県教育委員会に通知。同時に2011年度から予定していた小中の新学習指導要領の情報モラル教育を前倒しで実施するよう求めた。4月には、青少年に有害なインターネット情報を見せないようにする有害サイト対策法も施行される。
ただ国がこの問題の前面に立ってこれ以上「規制」の形で推し進めるのは決して好ましくない。学校への携帯持ち込みを禁じても、いじめや犯罪がいきなり減るとは考えにくい。結果、成果が上がらないからと所持自体を禁じ、より厳しい規制に傾くなどエスカレートしていく可能性が否定できないからだ。
子どもたちが、携帯電話のネット掲示板や自己紹介サイトへの書き込みをめぐって、いじめの被害者や加害者になる、さらには犯罪に巻き込まれるトラブルが後を絶たない。対策は必要だ。だが単純な規制は表現の自由との間にあつれきを生む。有害サイト対策の立法化に国や国会議員が当初、正面から対応に乗り出すことをためらっていたのもそのためだ。

■原因とまで言えず

子どもたちを携帯やネットといかに付き合わせていくべきかを考えるのは、やはり子どもとじかに接する親や教師の役割のはずだ。保護者や学校、周囲の大人たちが対策に立ち上がるのが自然であり、この問題で国に主役を譲ってはならない。
今回、文科省が明らかにした調査結果によると「ネットいじめ」は相変わらず増え続けており、07年度は全国の小中高校で5900件(対前年比1000件増)を確認、いじめ全体の6%を占めた。だが裏返せば携帯やネットによって増えたいじめは「6%」にすぎず、関与したとはいえるが、原因になったとまではいえないとみるべき。
また「学校裏サイト」は3万8260件(08年1-3月調査)だったが、うち88%は「2ちゃんねる」などの掲示板にある特定の話題についての書き込み。グループホームページ型のいわゆる「裏サイト」は12%、2000件弱だった。
最近の調査では裏サイトを継続的に見ている子どもは意外に少なく、あまり深刻にとらえるべきではないとの見方もある。だが今回の書き込みも「キモイ」「うざい」など誹謗(ひぼう)中傷が50%、「死ね」や「消えろ」といった暴言も27%。やはりこの中傷や暴言の多さを軽視するわけにはいかない。

■子ども自身考えて

卒業や入学のこの時期は携帯電話がもっとも売れる季節。まずは家庭や学校で使い方をめぐり、しっかり議論してほしい。携帯を学校に持ち込む、持ち込まないやサイトを見せる、見せないの「二元論」では解決の糸口は見えてこない。発信する言葉に責任を持つ、自らが不快なことはほかの人にもしない、個人情報を安易にさらさないなど携帯を正しく賢く使う方法やルール、マナーについて子ども自身に考えさせてほしい。
幸い県内には子どものネット環境を守る活動を地道に続け総理大臣賞に輝いた「Kodomo2.0」のような市民グループがある。佐賀大学や県警、県内自治体、ケーブルテレビ局などの産学官連携も強い。相談や助言を頼むところは多い。

0 件のコメント:

コメントを投稿