2008年11月22日土曜日

論説・太陽光発電 欧州の制度、国は検討を


狂乱の原油価格がようやく沈静化。県内のガソリン価格も一リットル120円台に落ち着いた。だが安心はできない。国際エネルギー機関によると、今回の金融危機で石油開発が遅れ、数年後にはことしを上回る乱高下が懸念されるという。いずれにしろ原油は有限の資源、時の経過とともに価格は上がり続ける。脱石油対策は地球環境面とともに経済面からも喫緊のテーマだ。

■優遇策原動力に

 二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギーの中で、特に期待が高いのが太陽光発電。太陽光という無限のエネルギーから電気を取り出すメカニズムは、エネルギーと環境の2つの問題を同時に解決する切り札として世界中が注目、地球規模の競争が始まっている。
 日本は2004年までシャープや三洋、三菱などのメーカーがこの分野で世界を大きくリード、世界一の太陽光発電国だった。だが05年度に政府が補助制度をやめた途端、ドイツにその座を奪われた。スペインやフランスなども積極的に市場に参加、ついに昨年は欧州市場全体で日本の5倍に達し、今後ますますその差は広がりそうな勢いだ。
 欧州で太陽光発電が加速する最大の原動力はフィード・イン・タリフ(FIT)という優遇策。太陽光発電の量に応じ、電力の買い取り価格(タリフ)を国が保証、いったん買い取りを開始したら、その後20年間は価格を変えない制度だ。さらにこの買い取り価格は一年ごとに5%程度下がる。狙いは「今年買うより来年まで待つ方が性能が上がり、安くなる」という買い控え心理に歯止めをかけ導入速度を上げるためである。メーカーに対しても発電量当たりに支払う金額を年々下げることで、結果としてコスト削減が実現できる。
 日本はこのFITを採用していない。代わりに電気事業者に対し、販売電力量のうち一定割合を新エネルギーで利用することを義務付けたPRS制度(再生可能エネルギー導入基準)をとり、03年度から施行した。温室効果ガスの排出権取引と同様、ほかからの買い取りもできる。だが、結果は欧州との差を縮めるどころか、逆に水をあけられている。

■政策主導が奏功

 ただ欧州も日本も今のところは火力などが主体であり、太陽光の発電コストは一キロワット当たり45円と火力の2倍かかっている。それでも欧州市場が成長するのはFIT導入などによる政策主導が奏功しているためだ。しかも太陽光発電技術は年々進み、逆に原油は今後も高くなるため15年ごろには双方のコストが同額になると予測される。10倍、30年には40倍に引き上げる目標を掲げ、補助制度も復活させた。本気でこれを実現する気があるなら、FITのような優遇策を加える検討も急ぐべきだ。
 地域で太陽光発電に先進的に取り組んでいるのが大阪・堺市。シャープや関西電力と組み発電所や関連施設を整備、11年度の発電開始に向け着々と準備を進め、シリコンバレーならぬ「ソーラーバレー」の誕生と意気込む。本県でも九州電力や電機メーカーと組んで実現できないか。景気は今後ますます深刻化しそうだ。クリーンエネルギーへの夢に向かって動きだす価値はある。

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