2008年10月18日土曜日

論説・地域SNS 顔見える安心のサイト


 インターネットを使ったコミュニケート手段の一つにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)がある。趣味や嗜好(しこう)、出身地や出身校など共通の「社交の場」を設け、語り合う会員制サービスだ。最近は特に会員登録の際に属性を求めるため、どこの誰かも分からない人が乱入し過激な意見を振りまくことは少なくなった。「顔が見える安心のサイト」が特徴だ。

■自治体も取り組み

 米国や日本で普及し始めたのは2003年ごろ。会員1500万人を抱える国内最大のサイト「ミクシィ」も04年に誕生した。世界では8億人から13億人(統計によって幅がある)が使っており、日本も登録会員数は1000万人強。06年にスタートした佐賀新聞社の「ひびの」も登録者は9000人を超え、子育てなどさまざまなコミュニティーでにぎわっている。
 企業では社内情報の共有化や企画提案の場に使うなど利用が増えているが、最近は住民とのコミュニケーションに生かそうと、自治体の取り組みも目立つ。自治体で最初にSNSを開設したのは熊本県八代市。04年秋に産声を上げた地域SNS「ごろっとやっちろ」だ。
 多くの自治体は電子掲示板を設けているが、匿名を認めていることで強い極端な発言が幅をきかせ、廃止するケースも多い。八代市もかつては掲示板を使っていたが、時間の経過とともに書き込みが減り活動が鈍ったことから、利用者同士が、より強く「つながり感」を持てる仕組みにしようとSNSに切り替えた。
 狙いは当たり、掲示板時代は600人ほどだった会員が現在は3900人に増え、特にエコロジーやごみ問題など環境に取り組むコミュニティーが活発に動き出した。会員たちに引っ張られるように職員らの意識も高まり、河川浄化活動などが盛んになったという。評判を聞いて他県の自治体からも視察が絶えない。

■「共生社会」に貢献

 同市の担当者が最も気を使っているのは行政とサイトとの距離感。会員同士のやり取りを通じ行政課題を吸い上げるのが狙いだが、この姿勢が出過ぎるとコミュニティーの自由な活動を妨げる。会員同士が近くに居住する地域SNSのメリットを生かし、「オフ会」と呼ぶ顔合わせの機会をつくる程度にとどめる。
 会員たちは、ネットでは積極的に発言している人が、実際に会うと意外に言葉少ななのに驚き、でもそのギャップを楽しんだりしている。会う機会が増え互いのメールアドレスを交換すれば、ネットを介する必要もなくなる。だがそれもいい。SNSがきっかけで住民や職員の自治意識が自然に高まれば、これにまさることはないというわけだ。
 県も、ことし六月に策定した「さがICTビジョン2008」で地域SNSの活用や普及を提唱している。人や地域が強いきずなで結ばれた「共生社会」の実現を目指すこのビジョンにSNSは大いに貢献すると期待している。
 全国のSNS運営者らが一堂に会する第三回地域SNS全国フォーラムが17
、18の両日、佐賀市の県立美術館をメーン会場に開かれる。地域SNSのさらなる可能性などを大いに議論する。参加は自由。まずはどんなものかを知り、そして参加してみてはいかがだろう。生きがいづくりのきっかけが待っているかもしれない。

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