2008年8月21日木曜日

論説・振り込め詐欺 危ない!ATMでの携帯


 ことし1~6月の振り込め詐欺被害総額は166億9000万円。年間284億円に達した2004年度を超す過去最高のペースで急増していることが、警察庁のまとめで分かった。県警によると県内被害も前年比2400万円増の約7000万円に上る。
 この犯罪の特徴は、被害者のほとんどが携帯電話でATM(現金自動預け払い機)に誘導され、犯人の言うがままに支払ってしまう。自分だけは騙(だま)されないと豪語する人までが見事にひっかかる。

■県内で50件被害

 振り込め詐欺の種類は大きく分けて4つ。県内ではことし50件の被害があり、うち29件と最も多かったのが「融資保証金詐欺」。資金繰りに悩む中小企業などを狙い「特別優遇金利で融資可能。まずは、融資額の1割程度を保証金として振り込んで」という手口だ。冷静に考えれば保証金が必要な融資はないのだが。被害額は4000万円。
 次は「おれおれ」と「架空請求」が八件ずつ。被害額は前者が2000万円、後者は500万円。「おれおれ」は依然減らない。税務署や社会保険事務所などを名乗り、取りすぎていた数万円を戻すからと誘う「還付金詐欺」は5件、300万円だった。
 全国的には、還付金詐欺が急増している。前年の780件から、4倍超の3400件に増え、被害額も同じく4倍の36億円に。それにしても、もらうはずが逆になぜ支払ってしまうのか…。それだけ手口が巧妙なのだ。
 もらえるものと思いこみ携帯電話の指示通りATMへ。だが残高を照会すると入金がない。携帯で問い合わせると「エラーのようです。とりあえず230万円ほど振り込んで。すぐに還付金と合わせ入金します」。ささやかな欲を刺激する携帯電話の魔力。多くの被害者が数十万円から数百万円を騙し取られた。
 この犯罪が多発し始めたのは03年ごろから。親族を装い交通事故の示談金を騙し取る「おれおれ詐欺」が最初に登場。警察、金融機関、メディアが繰り返し注意を呼びかけるのを尻目に犯行は単独犯から組織的に。手口も社会背景に応じ、手を変え品を変え被害を広げている。

■国際化の様相も

 犯罪拡大の背景にはやはり暴力団がいた。免許証や健康保険証などを偽造し、レンタル携帯電話を騙し取り、架空口座を開設、少年たちを使って詐欺を実行していた。6月には関東、関西、北海道で警察が暴力団組事務所を家宅捜索し組員計17人を詐欺などの疑いで逮捕した。また先日は神奈川県警が中国から携帯電話で振り込め詐欺を働いた容疑で中国人2人を逮捕。国際化の様相まで示し始めた。
 ただこの犯罪は犯罪者側にも弱点がある。ばれないよう架空で設けた振込先口座だ。国は金融機関に調査させ、これらの口座約10万件を凍結した。口座に残る50億円を今後2年間で被害者に返還していく。問題は申請の方法が十分に広報されていない点。凍結口座の一覧は、一般にはなじみが薄い預金保険機構のサイトにしかなく、公開されたのもつい最近だ。
 県内では金融機関や県警生活安全部などが相談に応じている。だが何よりの防止策は、携帯電話を持ってコンビニやスーパーなど監視員がいないATMに誘う「甘いささやき」にうかうかと乗らないことにつきる。

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