2008年7月31日木曜日

論説・県の情報化 高齢者に分かりやすく


 ICT(情報通信技術)活用で快適な暮らしをめざす「さがICTビジョン2008」を発表した県は早速、庁内にICT推進本部を立ち上げ、市町との連携による電子自治体システム共同化への道を探り始めた。高齢者も満足できる情報環境の実現をめざして。

 映像などデータ量が重いデジタル情報をスピーディーにやり取りできるブロードバンド(高速大容量)。この県内世帯カバー率は、国が目標にしている2010年度より2年も早く、ほぼ100%を達成した。
 県土がコンパクトにまとまっているうえ、難視聴ゆえに普及したCATV局のケーブル網が力となり、懸念されていた唐津市の離島対策にもめどがついた―などが大きな理由だ。CATV局のうち四局は無線のワイマックス免許も取得するなど、ブロードバンドにとどまらず通信基盤は他県に比べ極めて厚い。

■同時発信の体制を

 今後は充実したこのインフラをいかに県民の快適な暮らしにつなげるかが課題である。県全体の電子自治体化に合わせ県庁内部でも教育、医療、産業などさまざまな分野ごとに今秋までに推進計画をまとめ、具体的な取り組みを進めていくが、何より優先すべきは地域情報が県内くまなくスピーディーに行き渡ること。特に台風や地震など緊急を要する災害情報の伝達が大事だ。県の防災対策部門に集積される情報が瞬時に新聞やテレビ、CATV局など県内メディアに伝わり、同時に発信される体制づくりを急ぐべきである。
 例えば、人への感染が懸念される鳥インフルエンザの脅威はお隣の韓国まで来ている。この防疫システムの広域運用について、県の川島宏一最高情報統括監が副会長を務める九州情報通信連携推進協議会で、大分県の家畜衛生飼料室が開発したシステムを隣の宮崎県と共同運用する実験も始まった。協議会には佐賀大学も参加しており、こうした近県との連携もしっかり視野に入れておく必要がある。
 県と市町がシステムを共同化して構築しようという電子自治体構想は八月末に各首長で構成する「県ICT推進機構(仮称)」設立からスタートを切る。システムにとどまらず運用や開発を担う技術者の共同化を実現すればコスト面でも大きな成果が期待される。
 ただ県内は合併で大きな市と小さな町の体力差が大きくなった。このため総論賛成、各論反対の傾向は強くなるだろう。無理をせず、スタートできる自治体からという二段構えの始動もしかたない。まずは踏み出すことを優先すべきだ。

■多くの「夢」うたう

 ICTビジョン2008は電子自治体だけでなく、障害者や高齢者のパソコン教室、ICTリーダーの育成などを打ち出し、携帯電話などを使って誰もがどこからでも県内情報を受発信できる「ワンストップ型地域ポータルサイト」で、生涯学習の利便性向上や在宅勤務の促進など多くの「夢」をうたった。
 その実現への第一歩はデジタル化やICT化などのきめ細かな広報である。テレビのアナログ放送停波の時期が三年を切ったことを知っているのは65%、受信方法は52%にすぎないという。またICTにいたっては幅が広く、説明される言葉がアルファベットやカタカナ語が多く高齢者には特に浸透しにくい。
 行政側は関係業者やICTリーダーに要請し、丁寧な情報提供や技術サポートをさせることが重要。県民一人ひとり、とりわけ高齢者の暮らしに視線を向ける姿勢を貫けば「最先端県」の呼称は自(おの)ずとついてくる。

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