2008年5月17日土曜日

論説・有害サイト対策 判断力育成、大人の義務


 ネット上の有害サイトから青少年を守るべく携帯電話会社がフィルタリング(閲覧制限)の準備を進め、サイトの健全性を民主導でチェックする第三者機関が誕生。与野党の国会議員団は法制化への動きを強めるなどさまざまな組織が課題解決に動きだした。

 国内の携帯電話は既に1億台を超え、1人1台の時代。その中で違法・有害なサイトをきっかけに事件に巻き込まれる子どもたちが後を絶たない。警察庁によると、昨年は出会い系サイト絡みの事件が1753件(前年比8.5%減)発生、うち18歳未満の被害者は1100人(同4.6%減)と統計を取り始めて以来初めて前年を下回った。

■凶悪事件に発展も

 だが、このうち96.5%が携帯電話の利用。また被害者の77.1%が小中高生、特に99%が女子という傾向は変わらない。事件内容は児童買春やポルノ規制法違反が760件で全体の四割強を占めるが、強制わいせつや強盗、さらには殺人など凶悪事件に発展したケースもある。
 警察庁は「性犯罪は被害を申告しにくく、被害実態はもっと多いはず」と分析しており、事態は依然、深刻だ。
 こうした事態を受け、総務省が携帯電話会社に対応を急ぐよう指示。携帯業界は18歳未満のネット利用には親の同意を前提にするなどの対策を実施。フィルタリングについても方向性が固まった。
 携帯電話会社だけにフィルタリングを任せると各社の「公式サイト」を軸に絞り込まれ、友人・知人間だけで情報をやりとりするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)や個人で情報を発信できるブログサイトの多くがシャットアウトされてしまう可能性が大きい。有害サイトの多くもSNSやブログを使っているためだ。
 SNSに関しては佐賀新聞社を皮切りに、いくつかの地方紙がサービスを実施、ブログジャーナリズムと並び新たな情報化推進の柱にもなっている。これが見られなくなる事態は避けなければならない。なにより「表現の自由」や「検閲の禁止」など憲法に抵触しかねない。とはいえ有害サイトは推計五千を超すといわれ、しかも日々量産され続ける。このチェックを携帯会社だけに押しつければ結果はそうなってしまう。
 「ここで動かねば政治の不作為」と自民党議員の一部が動きだし、民主党でもこの問題を法的に解決しようとする動きが出てきた。当初はやや乱暴な案もあったが徐々に整理されてきたようだ。

■客観的認定が目的

 一方、国の規制では臨機応変に対処できないし、なじまないと学者や民間メンバーによる「第三者機関」も相次いで登場してきた。青少年保護とネットビジネスの健全な発展の両方をにらみ、民主導でサイトの健全性を客観的に認定する目的だという。
 いずれにしろ青少年を有害サイトから守るべく政府や与野党、業界や第三者機関など大人たちがよってたかって解決に向かうのは歓迎だ。当面の課題は膨大な有害サイトのチェック。人海戦術に頼っていてはスピードが上がらない。言語処理や検索技術を駆使した省力化システムの開発や、携帯会社ごとの技術開放などが前提になろう。いずれにしろ今秋にはスタートといい、それを待ちたい。
 今やるべきは、この問題の啓発や解決に地域、学校、そして家庭が取り組むこと。有害サイトに限らず、あらゆる事象には正と負の両面があること、そしてそれを判断する力を、大人たちは自らの経験をもとに子どもたちに教えていく義務がある。

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