2007年11月30日金曜日

論説・院患者射殺事件 暴力団壊滅の機会逃すな


 武雄市の入院患者射殺事件で、容疑の暴力団組員が別の事件で逮捕された。背後には暴力団抗争があった。被害者が突然、この抗争に巻き込まれたことは確実。事件の真の解決のためにも、県警は威信をかけ、銃社会根絶に立ち上がらなければならない。

 武雄市の病院に入院していた男性が、いきなり病室に侵入した男から拳銃で撃たれ亡くなった。犯人が病院にいた時間はわずか3分。このあまりに傍若無人な手口から、武雄署の捜査本部は暴力団による犯行との見方を強めた。だが被害男性からは組関係者との付き合いなどまったく浮かんでこない。まさか、間違って殺害されたのでは―。誰もが抱いたこの不安が、当たってしまった。

■泥沼の抗争に発展

 逮捕された組員が所属する指定暴力団・道仁会は組員700人、久留米市に本拠を置く九州最大の組織。昨年5月、3代目会長の「跡目」をめぐる内紛で、分裂した300人が九州誠道会(本拠・大牟田市)を名乗ったことで両者の関係が一気に悪化、泥沼の抗争事件に発展した。
 ことし六月、九州誠道会の2人の幹部が久保田町と熊本市で相次いで殺害されると、就任間もない道仁会3代目会長が8月、福岡市で銃撃を受け死亡。今月も大牟田市の病院前で誠道会系組幹部、数日後には久留米市で道仁会系の組長と組員が殺された。
 県内など北部九州4県で繰り広げられる今回の抗争は銃撃事件が20件を超え、死者は互いに3人ずつ、計6人に達した。終息の気配はない。銃撃があった現場はどこも、子どもたちが集団登下校。大人たちも銃弾におびえながらの落ち着かぬ暮らしが続く。
 そんな中、国内最大の暴力団山口組が誠道会側についた疑いが出て、先月は福岡県警が120人態勢で神戸市の同組総本部を捜索した。今も市街地で、銃を持った組員同士が勝手に襲撃しあうとんでもない状況。抗争期間は既に一年半におよぶ。山口組など他の暴力団に「飛び火」しないうちに、歳末商戦やクリスマスの前に、1日も早く終わらせなければならない。
 このところ、中国はじめ外国人の犯罪が増えたことで、毒を持って毒を制する「暴力団必要悪」なる意見も出ているが、詭弁(きべん)にすぎない。暴力団はいうまでもなく暴力を背景に法律すれすれ、時には平然とこれを破って暮らす犯罪者集団にほかならない。

■資金源広がり巧妙

 その根絶を図るべく暴力団対策法が施行されてから15年。この間、構成員数こそ2万人減ったが準構成員は逆に1一万6000人増え、総数8万6000人(2005年版警察白書)。数千人減ったにすぎない。04年には、巻き添えになった被害者が簡易な立証で組長の賠償責任を追及できるようにするなど、暴力団活動にブレーキをかけるべく改正も行われた。しかし現実はこのありさまだ。
 暴力団の中には、覚せい剤や拳銃密輸などで得た資金を元に、金融ブローカーらと組みベンチャー企業などに投資、莫大(ばくだい)な利益を上げるものも出てきた。上場した途端、牙をむいた暴力団に乗っ取られる新興企業が増えている。さらに株取引の場が、犯罪で得た資金の洗浄に使われるなど、彼らの資金源はますます広がり巧妙になってきた。
 だが今回の抗争は、そんな複雑な話ではない。「跡目争い」という自らの都合だけで市民の迷惑も顧4四県警がしっかりと連携し実現してほしい。特に佐賀県警には、亡くなった市民の無念を晴らすためにも奮闘を期待する。

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