2007年8月25日土曜日

論説・総体そして甲子園 高校生に教えられた


 佐賀総体に続き甲子園も閉幕、県内高校生の熱く長い夏が終わった。総体は新体操など6団体・個人、甲子園は佐賀北高がミラクルの優勝。すべての場面で総体を支え、バス泊を重ねながら炎天下で応援を続けた高校生。この夏、彼らは日差し以上にまぶしかった。

 高校生アスリート2万7000人、観戦者50万人が全国から集まった今回の佐賀総体は、県内の会場が少なく狭いため24日間という例年にない長期間の開催になった。しかも全29競技すべてをインターネットで動画配信する総体初の挑戦が加わり、関係者は準備から運営までめまぐるしい日々を送った。
 政局の混乱から参議院選挙の投票日が総合開会式の翌日に飛び込み、4日後には台風5号が襲来。そのうえ連日の猛暑、運営は予想以上に困難を極めた。

■期待以上の戦力

 この事態を救ったのが高校生たちのパワーだった。多くの競技で県内選手たちは持てる力を十二分に発揮。新体操のアベック優勝はじめ、なぎなた、剣道、アーチェリーなど、連日すばらしい成績を残した。
 「一人一役活動」で大会を支える生徒たちも期間を通じて元気そのもの。農業高校を中心とする生徒たちが育てた観葉植物が遠来の客をもてなせば、総合開会式の公開演技では1300人が「佐賀の風」となって県総合運動場を駆け抜けた。
 ネット配信でも生徒たちが大活躍。初めて持った動画カメラにも臆(おく)することなく、すべての会場で期待以上の戦力となった。特に屋外競技を担った生徒たちは、プロの指示に従い全身を汗にしてがんばった。インターネットの集配信センターや記録本部など大会に関係するあらゆる場所に、担当教師に率いられた生徒たちの姿があった。
 この総体の勢いや熱気が伝播(でんぱ)したとしか思えない。甲子園で開幕戦に登場した佐賀北高は、大舞台の緊張などみじんも感じさせないプレーで初戦を突破。以後も延長再試合、逆転、サヨナラ、そして逆転満塁ホームランとあらゆる勝ち方で「旋風」を巻き起こし、ついには佐賀商以来〝わずか〟13年で深紅の優勝旗を持ち帰るという、予想さえしない快挙を成し遂げた。
 佐賀北ナインは馬場、久保両投手を軸に守りに守った。毎回のようにランナーを背負いながらも耐え粘り、長い甲子園の歴史を塗り替える73イニングを戦いきった。公式戦で1本も打てなかった本塁打を3本もスタンドにたたき込んだ副島君の活躍。とりわけ3本目の逆転満塁弾は県内高校生の潜在力爆発の集大成だった。

■「君色の風」全国に

 公立の普通高校が私立の強豪を次々に倒し、参加4081校の頂点に立ってしまった。さしもの猛暑さえ沈静化させるこのさわやかなニュースに新聞やテレビ、インターネットとあらゆるメディアが反応。佐賀の高校生パワー「君色の風」は県内どころか全国に吹き渡った。
 佐賀北の活躍が県民に夢と希望を与えたとして、県は同校野球部に県民栄誉賞を贈った。佐賀をこれほど強く全国にアピールしてくれた貢献を考えれば当然の措置だろう。だがこの呼び水になった佐賀総体の選手たちの健闘、支えた県内のすべての高校生もまた同じく称賛に値する。
 多くの県民はこの夏、少年の誰もが大きな可能性を秘めていることを目の当たりにした。そして彼らの傍らに立つ指導者たちからは、少年たちに夢や理想に向けて行動する尊さ、重さを伝えることの大切さを学ばせてもらった。


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