2007年7月29日日曜日
論説・原発の地震対策 電力会社は十分な調査を
新潟県中越沖地震の震源断層は東京電力柏崎刈羽原発のわずか数キロに迫っているらしいことが、国土地理院の調査で判明した。国も立地調査の審査が不十分だった可能性を認めた。電力各社は放射能の危険をあらためて自覚し、地震対策をいま一度早急に見直すべきだ。
■最高裁判決に影響
排気筒や使用済み燃料プールだけでなく原子炉からも放射性物質が流出、さらには放射線管理区域内への大量の海水流入など、柏崎刈羽原発の数々のトラブルを見れば、誰もが納得のいく調査結果だ。
原発立地をめぐっては「原発反対刈羽村を守る会」がこの断層の存在をもとに、東電や国を相手に運転差し止めを求め最高裁で争っている。今回の調査結果は当然、この判決にも影響を与えるだろう。
東電の勝俣恒久社長は地震後、その規模が「想定外だ」と繰り返していたが、こうなると想定そのものが甘かった可能性が強い。同社には原発データの改ざんや隠ぺいの「過去」もある。今は釈明より、今後の対応をこそ急がねばならない。
電力10社は戦中、北海道から九州まで国内のブロックごとに配電を担っていた会社。戦後の1951年、そろって国の許可を得て事業を開始。その6年後に日本原子力研究所に国内初の原子の火がともると、相次いで原発運転に乗り出した。それから五十年、国内で稼働する発電用原子炉は55基。 総電力量の3分の1を占めるまでになった。
唯一の被爆国であり放射能汚染に最も敏感なこの国は、原発を許容した。さらには10社がそれぞれの地域において「独占」の形で事業を続けることも容認した。それは電力が水と並び、暮らしに欠かせない基幹インフラであること、また放射能漏れなど決して起こさない「確かな安全」を担保してくれる企業だと信じたからだ。10社はこの信頼を裏切ってはいけない。
日本列島は4つのプレート(地球の表面を覆う岩石層)が重なり合う世界有数の地震大国。しかも最近は、地震の周期が短くなってきたという穏やかならぬ説も浮上する。確かに中越地方は3年前も今回同様、マグニチュード7近い大きな地震が起きた。ことし3月には能登半島で同レベルの地震があり、二年前には福岡や県内にも被害が及んだ。国が昨年、25年ぶりに耐震指針を引き上げた矢先、皮肉にも今回の地震は起きた。国内の原発はいずれも海の近くに立地している。今回や福岡沖同様、把握できていない海底の活断層があるかもしれない。
■参院選の選択肢に
規制緩和で電力の一部が自由化されたとはいえ、10社はいずれも地域を代表する企業であり続けている。この地震を機にあらためて国民の命を預かっていることを肝に銘じ、国の指針を上回る耐震策を講じてほしい。
県民にとっては、3年内にプルサーマル導入を目指す九電玄海原発の対応が最も気掛かり。古川知事も24日の定例記者会見で、導入計画は玄海原発の立地が地震でも安定しているという前提の上に立つものだとし、九電の今後の対応に「最新の知見に基づき調査するはず」と期待した。この思いは知事だけではない。九電は県民すべての思いだと受け止め、不安を一掃すべく対応を急いでほしい。
きょうは参議院選挙の投票日。告示の数日後に起きた今回の地震が、日を追うごとに「原発の安全」を揺さぶり続けている。どの候補者が、政党が、この問題にきちんと取り組んでくれるのかという点も、有権者の選択肢の1つに加えられた。
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