「青春・佐賀総体」の競技の模様を全国に動画発信する事業が準備の大詰めを迎えた。撮影などに高校生の力を絡めながら、二十九競技すべてをネットでライブ中継する総体初の壮大なチャレンジ。開幕まで一カ月、関係者がいかに連携するかが成否の鍵を握る。
古川知事の熱い思いが引っ張るこの動画配信事業を受託したのは、佐賀市のITベンチャー「ジェピック」(石丸純子社長)と、通信のソフトバンク、映像のNHKグループ・九州メディスの3社。
■情報先進アピール
事業の目的は映像、音声、文字情報を使っての全競技リアルタイム配信で「情報先進県佐賀」の名を全国にアピールすること。同時に工業や商業高校19校の生徒たちが7、8人ずつに分かれ、プロの撮影クルーに交じってカメラを持つというのが目玉だ。だが、壮大な試みは、それだけに今なお難航している。
現在までに固まっているのは、競技ごとの映像チームの分担だけ。NHKが総合開会式ほか12競技を撮る。残りはケーブル局が自らのエリアで開催される分を担い、足りない分を福岡の映像制作会社などが請け負う。
これらをジェピックのサーバーに送り、文字情報を加え、パソコンや携帯電話に流すわけだが、肝心の内容がいまだ詰まっていない。データ入力には約790人が必要だが、まだ60人足りない。実況に不可欠な競技解説者にいたっては半数の競技しか確保できていない。県や県教委が強力に後押しし、各競技団体に早急に協力を仰ぐ必要がある。
全競技のライブ放送も厳しい。海や川が会場になるヨットやカヌー、山中を縦走する登山はそもそも通信環境がない。唐津市鎮西町で行われる女子バスケットも同町の情報環境が脆弱(ぜいじゃく)なため実現の見通しが立っていない。だが簡単にあきらめるわけにもいかない。例えば鎮西町の体育館には光ケーブルを張り、ヨットやカヌーは埠頭(ふとう)から望遠で撮るなどぎりぎりまで工夫してほしい。
幸いなことに、この事業と並行して別に二つの動画配信事業の計画が進んでいる。1つは携帯電話を持った市民リポーターが、1人1役運動に携わる高校生や試合後の選手らを取材、中継するボランティア「チームU」の活動。
もうひとつは高速、大容量のギガ(メガの1000倍)回線を使い、精細な映像を流す「高校総体広域中継プロジェクト(仮称)」。NPO・ネットコムさがが総務省や九州電力などと連携し、ネットではなくケーブルテレビで、全国に発信する実験。ボランティアやNPOにより、これら2つの事業が立ち上がったことで、青春総体の動画発信態勢は一気に厚みが加わった。
■撮影、編集を訓練
残るは基幹事業であるネット配信の課題克服。ケーブル局がやきもきしていた高校生スタッフ派遣は、ようやく正確な人員やメンバーが決まった。だが派遣される生徒は未経験者ばかり。これから撮影や編集のトレーニングが始まるが、本番の会場はどこも狭い。実際に彼らはどこまでやれるのか、受け入れるケーブル局はもちろん、競技関係者らの不安は大きい。
とはいえ、高校生がメディアのプロと一緒に活動できるせっかくの機会。大会を終えたとき、生徒たちの心に達成感という風が吹き渡るかどうかは、事業にかかわるすべての大人たちが課題の克服へいかに連携するかにかかる。県や各高校、市町、ジェピックなど3社、ケーブル局など関係するすべての大人たちは、その点をいま一度強く認識し、最後の追い込みにまい進してほしい。
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