中高生の間で人気の「学校裏サイト」が新たないじめの温床になっている。県警の報告で明らかになった。背景には、インターネットもできる高機能携帯電話の普及がある。だが、この問題の根幹は、人として最低のモラルさえ守られていない実態にこそある。
■本音を語る掲示板
「学校裏サイト」は学校が運営管理する「表」のホームページと異なり、生徒同士が本音を語り合う掲示板サイトの総称。大半がたわいないやり取りだが、たとえば「校内1の美人は?」の書き込みに端を発し、ののしりあいに発展、果ては実名が飛び出し、傷ついた生徒が不登校に陥ってしまう、といったケースが頻発している。
そんな中、先月末、大阪府警がある裏サイトの管理者を名誉棄損ほう助容疑で書類送検、加害者の女子中学生を児童相談所に通告した。ネット上の掲示板をめぐり民事で名誉棄損を争うケースは多いが刑事では初めて。警察が動いた効果は大きかったようで、多くの掲示板サイトが今は鳴りを潜めている。匿名に隠れたつもりでも履歴が残ることを、管理人や中高生たちが思い知ったのかもしれない。
よそごとではない。県内の中高校も多くの裏サイトに網羅され、同様の状況が起きている。県警へのネット中傷の相談件数は昨年一年間で67件、前年の2倍になった。中傷を受けた当事者や家族が管理者に削除を要請し、すんなり実施してもらえない場合に初めて警察が乗り出す。つまり実際の発生件数は、この数字の数倍はあるとみるべきだろう。またサイトの多くが携帯電話でも可能なホームページの作り方を掲載しているため、中高校生による「にわか管理人」サイトがあふれる。専門機関の推計によると現在、学校裏サイトの数は1万5000を超えているという。
青少年の危険なネット利用は、この裏サイトにとどまらない。オンラインゲームの過熱とともに他人のIDやパスワードを詐取するなどの不正アクセス事犯は、青少年が加害者になるケースが3割を超え、5前の10倍近くに跳ね上がった。さらにプロフィルを公開するサイトには、ためらいもなく自らの情報を発信する中高生も後を絶たない。極めて危険な状況が進行しているのだ。
■有害サイトを制限
技術的対策としてはフィルタリングという手段がある。有害サイトにたどり着けないよう防止するものだが、増殖を続ける新手に対しては常に「後追い」でしかなく、効果には限界がある。それでも使うに越したことはないが、残念ながらまだ利用は少ない。昨年末、総務大臣がプロバイダー業者などにフィルタリング促進強化を要請、4月には県も条例を改正し同様に努力義務を課した。業者はこれを機に同サービスを強力にアピールしており、今後の利用の伸びを期待したい。
ネットは今後も利便性と「危うさ」という二律背反の課題を併せ持ったまま進化を続ける。今の危険が片付いても次のリスクが生まれる。とはいえ子どもをいつまでもフィルタリングの温室に囲っておくことは難しい。まして一切禁止ではインターネットを正しく便利に活用する機会まで奪いかねない。
まずは親がネットの抱えるこうした「負」の部分をある程度は知っておくことが大事だ。その上で子どもの成長過程に応じ、適切なルールを設けることなどが有効だろう。だがそれ以前にしつけておくべきはモラル。匿名の陰に隠れ他人を中傷することは、人として最も恥ずべき行為であることを教え込んでおかねばならない。
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