県内のIT(情報技術)化推進を目指し産学官が連携するネットコムさが推進協議会(会長・井本勇知事、理事長・田中稔佐賀銀行会長)の視察団が7月中旬、3泊4日の日程で中国・上海に飛んだ。アジアへの展開を視野に入れ、中国の大学の中でITのトップを走る上海交通大学と、電子回路部品のチップ抵抗器用セラミック基板を上海市の隣、蘇州で生産する共立エレックス(本社・西有田町)の視察が目的だ。
■建築ラッシュ
視察団は佐賀新聞社の中尾清一郎社長を団長とする7人。福岡空港からわずか1時間半、東京に行くより短い時間で上海虹橋空港に到着した。着陸直前、上空からの景観でまず驚かされたのは、そのすさまじい数の高層ビル群。20階以上の高層ビルの数は、日本全国でも約1500棟程度というのに、ここ上海市では楽に2000棟を超えたらしい。しかも今なお企業ビルやホテル、マンションの建築ラッシュが続く。
深川市など経済特区になった広東や福建省の開発から遅れること十年、今、大きく動き出した上海市。それは最後にIT化への胎動を始めた大国を象徴するようにも感じた。
入国手続きも意外なほど簡単だった。何しろ共産党独裁の国、ある程度は格式張った審査を予想していたが、なんだか肩透かし。パスポートの顔写真を確認された程度で、あっさりと上海の地に足を踏み入れた。
■「底力を見せる」
「米国はITの先進国だけど、スタッフには中国人やインド人が大勢かかわっている。ハード面でも半導体など日本の技術力の貢献が大きい。アジアのバックアップなしに、今の米国の隆盛はない。これからはアジアが連携し、底力を見せる番だ」
上海交通大学の「電子信息学院(電子情報学部)」。一通りのあいさつがすんだ途端、今回のミッションの担当者でもある張荻教授(44)の口からこんな威勢のいい言葉が飛び出した。
中国は二年ほど前から世界に散った技術者たちを高収入でUターンさせるなど、IT面でも「全球化(グローバル化)政策」を推し進めている。世界貿易機関(WTO)加盟がほぼ確定し、次の五輪開催地には北京が決まった。
さらに十月にはこの上海でアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳や閣僚会議も開かれる。そんな国の勢いに後押しされるように、同学院の四人の教授たちの口調は滑らかさを増した。
【メモ】
■上海市 人口1321万人、GDP4551億元(11元=15.5円)はいずれも中国国内トップ。経済成長率は9年連続二けたで上昇。93年以降下降気味だったが99年から再び上がり始めた。市民の平均年収は1万8531元で国平均の2倍以上。カラーテレビ、冷蔵庫、エアコンがほぼ100%普及、携帯電話普及率も30%近い。(日本貿易振興会上海代表処調べ)
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