2000年2月5日土曜日
論説・変革の時代 情報軸に世界経済加速
先に発表された九州経済白書は現在を「第3の変革期」と位置づけた。その上で「脱皮する民と変わらない官」という標語を冒頭に掲げ、厳しいリストラにさらされる民間企業に対し、なかなか効率が上がらない行政にいらだちを見せた。
■合併が最良の方策
具体的な提言の第1は市町村の合併。介護保険制度やごみ問題などで広域による取り組みが始まってはいる。だが白書は、これらが県と市町村の間に挟まるため「3重構造」となり、調整に手間取20二十万人ぐらいが適正と踏み込んだ。
九州経済界の焦りの背景には、従来の価値観を根底から覆すような世界経済のハイスピードな動きがある。
つい先日、昨年のパソコンの国内出荷台数が1000万台を突破、世帯普及率は33%に達したことがわかった。途端にソニーが自社製品をインターネットにのせて販売を開始。住友銀行は入金照合システムを開発し特許取得にめどを付け他の追随を阻み、省庁へのハッカー進入事件では、複数の商社が瞬く間に防止システムの販売を発表した。まだまだ米国には及ばないが、国内の情報関連の動きにも確かに加速が付いてきた。
一方、企業の価値を測るバロメーターも、年商や従業員数から株式時価総額(株価×発行株式数)に変わった。株価を決める投資家やアナリストたちは、企業の将来性まで読み込み、その価値を冷徹に洗う。ちなみにトヨタの株式時価総額は12兆円、日産は1兆円程度。そして鳥栖市出身の孫正義氏率いるヤフー・ジャパンは起業後わずか数年、従業員数も日産の0.1%でざっと3、4兆円。
■株への関心一気に
その孫社長らが6月には、世界最大の株式市場「ナスダック」を日本で開設する。株や信託への関心が一気に高まりそう。だから白書は現在を「明治維新」「第二次世界大戦後」に続く「第三の変革期」に入っていると警鐘を鳴らす。孫氏などは、さらに絞り込み「デジタル革命」の時代と言い切るほどだ。
時代の流れは、常に経済から起こり、行政がこれを追いかけ、最後に法律が改正される。テンポを速める経済と地方行政とのずれが、大きくなるばかりに見える。白書があえて市町村合併にまで言及したのも、その危機感が並々ならぬものであることを物語る。購買人口などから考えても、20万人程度の都市の形成は譲れない線だろう。
時代は行政だけでなく、人もまたのみ込んでいく。つい数年前まで大きく開いていたはずの日米の完全失業率が瞬く間に逆転してしまった。シリコンバレーから次々にベンチャー企業が生まれ、労働者を吸収していく米国に、日本が後れを取っているのが最大の原因。であれば、日本の雇用問題もいずれ解決していくと期待はできる。
快適さや便利さへのニーズと経済合理性の追求を軸に、変革の速度はさらに上がり、大型合併は今後も増え、超大企業と中小企業の2分化が鮮明になっていくと思える。好もうと好むまいと、その時代を生きているという認識だけは持っておかねばなるまい。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿