熱いアスファルトの先が濡れたように見える現象。「逃げ水」というらしい。どこまで行っても追いつけない。新聞づくりも同じ。締め切りぎりぎりまで、あらがい続け、刷り立ての紙面を見ながら「こんな見出しにしておけば…」の繰り返し。
紙面製作は夕方、素材になるニュースの扱いを決め、真っ白な割付用紙にトップ、準トップと、デッサンしていくことから始まる。夜、新しいニュースが次々に飛び込み、形はどんどん変わる。見出しも、より的確なものにと、何度も練り直していく。午後10時を過ぎると、編集局は毎日ちょっとした〝戦争〟だ。
動き続ける作業の中でミスが発生する。内容によっては、回り始めたばかりの輪転機を止める事態も。若い整理記者に大胆さを求めながら、同時に細心の注意を促さなければならない。矛盾が矛盾ではない世界だ。
しかし最後の紙面を降版した時の安どと充実感は、そんな悩みを一掃する。午前1時すぎ、社屋を出て初めて雨に気づく。次々に出発して行く発送のトラック。明日こそもっと納得いく紙面を作ろう。「逃げ水」を追う日々が続く。
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