1999年10月16日土曜日

論説・防衛庁談合 暗部暴く捜査に期待

防衛庁へのジェット燃料納入をめぐる石油元売り大手11社の入札談合事件は、東京地検の強制捜査に発展した。入札に際し、事前にシェア配分や受注予定者を決めていた独占禁止法違反の疑いで、同地検特捜部は各社の担当幹部らを事情聴取。押収資料と突き合わせ、発注側の防衛庁調達実施本部の関与など談合の実態解明を進めている。

■20年も続いていた
今回の家宅捜索の直後、11社の1つで業界トップの日石三菱は「入札の形式をとっているだけで、実態はすべて防衛庁の主導。価格競争の余地すらなかった」と見解を発表。防衛庁はこのコメントに強く反発している。どちらがうそつきか、真相はいずれ捜査の過程で明らかになろう。
この疑惑は、会計検査院が「不透明な入札」と指摘したのに端を発し、ことし3月末、公正取引委員会が11社を同容疑で立ち入り検査。その結果、「悪質な談合」として東京地検に告発していた。
事件は日本を代表する石油会社がずらり顔を並べ、しかも舞台が汚職や背任など、昨年立て続けの不祥事で権威を失墜した防衛庁。談合の規模は年間四百億円、それが少なくとも20年は続いているというのだから重大。防衛庁予算はすべてが税金、断じて見過ごすわけにはいかない。

■価格どうにもなる
防衛庁調本はその名の通り、陸海空自衛隊の戦車、潜水艦、航空機、弾薬、燃料とあらゆる装備品の調達を受け持つ。その予算は年間約2兆円と巨額だ。
調達実績をみると、上位はすべて一部上場の大企業。トップから20位までの業者で、年間調達額の7割を占める。何しろ大型の特殊な「買い物」ばかり、業者は当然限定される。防衛産業の〝不動の四番〟と言われる三菱重工が戦闘機や戦車、対潜哨戒機は川崎重工、装甲車は小松製作所という具合だ。
だから競争入札などあるわけがない。調本の原価計算課が材料費、加工費、手数料、利益率などを計算し、積み上げて価格を決める。武器は一般消費者がいないから、価格は言ってみればどうにでもなる。高い安いの判断をつける目安がないのだ。
こうした体質を考えると、今回の入札が防衛庁主導だという日石三菱の言い分は、いかにもありそうな話。もちろん「やみカルテル」に名を連ね、甘い汁を吸ってきた同社の責任も逃れようはないのだが。
先にも触れたように、防衛庁は昨年、富士重工創始者の孫で元政務次官の中島洋次郎被告の汚職や、NECと調本の癒着が表面化。陸海空自衛隊の組織ぐるみの証拠隠滅も暴かれ、東京地検の家宅捜索が三回も行われた。今回の強制捜査のわずか数日前には、そのNEC絡みで調本の元本部長に有罪判決が下されたばかり。間髪入れぬ地検の動きには、並々ならぬ決意がうかがえる。
ただ2次、3次、4次防やFSXで対空ミサイルなど最重要機種の決定を下したのは調本ではなく、いずれも時の政権。そして常に、米国の圧力やフィクサーの存在があった。今回の談合はいわば捜査のとば口。昨年来の防衛庁捜査で、地検がこの暗部にどこまで迫れるのか、じっくり注目していきたい。

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