1999年7月17日土曜日

論説・ 金融強盗多発 逮捕、一日も早く

警察庁犯罪白書によると、不況とともに犯罪が増え続けているが、世界的には、日本の治安はまだ極めて良好。特に殺人や強盗など凶悪犯は少ないという。
ところがなぜか、県内ではその強盗が多発。金融機関などを狙ったものだけで、ことしに入り6件。うち5件が鳥栖署管内に集中する異常事態だ。特に怖いのが、9日に北茂安町で起きた簡易郵便局の事件。
 本物の回転式けん銃を、いきなりぶっ放している。犯行後にも一発、計2発を発射。狙って撃たれたらもっと大変だが、威嚇でも跳弾で命を奪われる危険だってある。何より間近でけん銃が発射されるなど、想像しただけでも恐ろしい。

■警戒の裏をかく
 しかもどうやら、つい2カ月前の共栄銀行基山支店と同一犯らしい。ヘルメットで顔を隠し、体型、背格好がそっくり。ともに金曜日の開業直後を狙い、バイクで逃走。何よりの共通点は、いとも簡単に銃を発射する凶悪な手口。こんな物騒なのが、近くに何人もいるとは考えにくい。
 さらに、両事件が同一犯とすると、共栄銀行で552万円を奪いながら、わずか2カ月足らずで簡易郵便局を襲ったことになる。鳥栖署の懸命の捜査が続く中、あえてその管内で犯行を繰り返したのは、犯人側によほど差し迫った事情でもあるのか。さらなる犯行の可能性もある。
もちろん県警も防犯面で、手をこまねいていたわけではない。福岡県警との連携強化や昨年6月には、県内のほぼすべての特定郵便局に、県警OBらによる専従警戒員を置いた。しかし、その裏をかくように、今回狙われたのは簡易郵便局だった。
 金融機関を狙った強盗の県内第一号は、1980年の鳥栖・田代郵便局事件。意外に歴史は浅い。事件の犯人は福岡県警の警察官だった。ちなみに66年の勧銀佐賀支店事件は、多額窃盗(金庫破り)で手口が異なる。

■7件同時に捜査中
 また真正のけん銃を発射した県内の強盗は、82年に唐津で起きた佐銀和多田支店事件が1件あるだけ。逮捕された犯人は暴力団幹部と極めて親しい男で、暴力団から銃を入手していた。
 強盗は、殺人と並ぶ凶悪犯罪。当然、刑は重い。検挙率も極めて高く、「最も割の合わない犯罪」といわれてきた。県内でも96年までは年平均1~2件の発生で、そのほとんどを解決している。
 様子が一変したのは97年から。郵便局などの金融機関2件、パチンコ景品交換所2件、コンビニ一件の計5件が2、3カ月おきに発生。3件が未解決だ。翌98年は11月に鳥栖市で起きたコンビニの1件だけだったが、これも今なお捜査中。そして今年は解決したのは3件だけ。この結果、計7件の強盗事件捜査が同時進行中。杵島郡江北町のゲームソフト店主殺人も抱えている。
かつて佐賀新聞の社会面トップを飾った殺人事件が、この何年かで次々に時効になった。県警の検挙率は全国でも高いらしいが、〝大魚〟を逃しているだけに、その印象は失礼ながら弱い。日増しに暑さ増す中、捜査員は大変だが、ぜひ今回こそ、頑張ってほしい。
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