第14回統一地方選挙の締めくくり、市町村長と同議員選挙の投、開票がいよいよあす25日に迫った。
有権者にとっては最も身近な選挙。特に今回選ぶ首長は、任期中に「介護保険制度のスタート」と「国の機関委任事務の原則廃止」という、自治体にとって革命的ともいえる二つの制度の、運用責任者になる。「介護」も「許認可」も、今後の住民の暮らしを大きく左右するものだけに、後悔を残さぬ選択が必要だ。
議員もまたしかり。3年前の連載「平成議会解体新書」に取り上げたような、首長とのけじめを欠いた関係はもう通らない。先に行われた県議、佐賀市議選でも若い人が台頭してきた。行政をきちんと監視するだけでなく、自らも政策立案できる能力が、有権者から求められている表れともいえる。
■2つの制度が始動
「介護保険」は導入まで1年を切った。要介護認定の新基準もどうやら決まり、10月からは申請受け付けが始まる。
県内市町村の受け入れ態勢は、他県に比べ進んでいるといい、認定と実態の誤差もそれほどないという。その点はひとまず安心だが、問題は今後の運営。高額な療養型病床群を大量に抱えれば、保険料もその分高くなる。いずこの市町村も財政はひっ迫しているから、当然ながら住民の負担が重くなる。サービスはそこそこでも価格の安い方を選ぶのか。個々の自治体や住民に、選択の判断がゆだねられる。
その場合、重要なのが情報の開示。例えば長野県は高齢者が多いが、在宅比率が高いため保険料は安い。お年寄りが多いから国民医療費がかさむ、という論理は短絡的過ぎるという事例だ。こうしたケースも含め受益格差の分析など、判断材料となるすべての情報を、行政は住民に提供していくことが求められる。
介護サービスの内容も徐々に増えてきてはいる。三井海上火災保険とNTTデータ通信が提携して参入を発表するなど、ここにきて民間企業の動きも活発になってきた。しかし受け手であり、買い手である高齢者が、優位に立つには供給はまだまだ少ない。「市場」の安定のためには、より積極的な国のバックアップも必要だ。
■首長のセンス重要
都市計画の決定、飲食店の営業許可、漁業権の免許、建築基準法事務など国の権限を地方に移譲する「機関委任事務廃止」を柱とする地方分権整備法案も来年4月から施行の見通し。県で八割、市町村でも三割を占め、明治以来続いてきた国の代行事務がなくなる。地方が主体的に行う「自治事務」が始まり、議会の調査権も拡大する。自己決定・責任を
伴う分権時代の到来だ。
〝一割自治〟とやゆされた地方公共団体が、これからは国と対等の、本来の意味での「自治体」に生まれ変わる。国や県の補助を仰ぎハードを造ってきた、行政のありようは一変せざるを得ない。限られた財政の中で、首長や議員の政治センスが重要になる。その能力の差が、そのまま近隣の町との格差につながる。
将来、隣の町をうらやましがらぬためにも、どんな首長や議員を選ぶか、今回の選挙の意味は大きい。
0 件のコメント:
コメントを投稿